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大阪高等裁判所 平成5年(ネ)2501号 判決 1994年2月17日

控訴人(原告)

沢原岳司

被控訴人(被告)

共栄企業株式会社

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

原判決を次のとおり変更する。

1  被控訴人は、控訴人に対し、金一〇〇万円及びこれに対する平成三年一二月一七日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

(控訴人は、当審において右のとおり請求を減縮した。)

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

4  仮執行宣言

二  被控訴人

主文と同旨

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実第二 主張(原判決二枚目表一〇行目から同三枚目表九行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三枚目表二行目の「二八二万九一三六円」の次に「のうち金一〇〇万円」を加える。

2  原判決三枚目表三行目の「平成三年四月四日」を「不法行為の後である平成三年一二月一七日」と改める。

3  原判決三枚目表九行目の次に行を改めて「したがつて、本件における争点は、<1>被控訴人車の運転手長南の過失の有無(いわゆる信頼の原則の適用の可否)、<2>過失相殺における控訴人、被控訴人双方の過失割合、<3>控訴人、被控訴人双方の損害である。」を加える。

第三証拠

証拠の関係は、原審記録中の書証目録及び証人等目録各記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求(但し、当審における請求減縮後の分)は理由がないから、これを棄却し、他方、被控訴人の反訴請求は理由があるから、これを認容すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由説示(原判決三枚目裏二行目から同五枚目表五行目まで)と同一であるから、これを引用する。

1  原判決三枚目裏二行目の「甲四、乙一の1、2、九、検乙号証各証、」を「甲一、四、乙一の1、2、二、三、四の2、五、九、検乙一ないし四の各1、2、五の1ないし5、六、七の1、2、八の1、2、」と改め、同三行目の「長南優治)」の次に「並びに弁論の全趣旨」を加える。

2  原判決三枚目裏六行目の「南北道路は」の次に「、幅員九・四ないし一〇・二メートルの見通しのよい舗装された直線道路であり、優先道路である。そして、その」を加え、同九行目の「立つており、」を「立つている。西接道路には、停止線及び一時停止線はなく、」と改め、同一〇行目の「ある場合には、」の次に「立体駐車場に遮られて、」を加える。

3  原判決三枚目裏一一行目の「状態であつた」の次に「が、それでも五〇ないし六〇メートル先までは見通せたし、西側歩道の中央付近の位置辺りからならば南北道路の南側の道路の見通しは良好であつた。そして、右の立体駐車場は控訴人の勤務する会社の駐車場であつたから、控訴人は、日々これを利用し、右の見通し状況については十分認識していた」を加え、同末行の「南北道路が優先道路であつた。」を「交通量は、南北道路、西接道路とも普通ないし閑散の状態であつた。」と改める。

4  原判決四枚目表一行目の「原告車は」を「控訴人は、当時、控訴人車(ポルシエ)で通勤し、同車を前記立体駐車場の一階部分に駐車させるため、」と改め、同四行目の「悪かつた」の次に「が、それでも五〇ないし六〇メートル先までは見通せた。しかし、もう少し東進し、南北道路の西側歩道の中央付近の位置辺りまで進むと、控訴人車の進行方向である南北道路の南側は少なくとも一〇〇メートル位先までは確認することが可能であつた」を加える。

5  原判決四枚目表七行目の「被告車は、南北道路を南から北へ」を「被控訴人車(タンクローリー)は、南北道路をセンターライン寄りに、南から北へ制限速度内の」と改める。

6  原判決四枚目裏七行目から八行目にかけての「右折の措置を講じた」を「右転把の措置を講じた」と改め、同八行目の「被告車左前部が」の次に「ほぼ正面衝突するような形で」を加える。

7  原判決四枚目裏八行目の次に行を改めて「7 控訴人は、本件事故直後、長南に「どこを見て運転しているんだ。」と言われて、「すみません。」と言つて謝つた。」を加える。

8  原判決四枚目裏九行目の「原告には」から同一〇行目末尾までを「控訴人としては、南北道路の南側の見通しのよい所まで自車を進めて一時停止をすべきであり、また、右折車が一時停止していた理由についても、直進する被控訴人車の通過のためではないかという思いを巡らすべきであり、その上で、進行方向である右方向(南北道路の南側方向)の安全を十分確認してから発進すべきであるのに、控訴人は、右折車が自己に道を譲つてくれたものと軽信して右方向の確認を全くしなかつた点において重大な過失があつたといわなければならず、他方、被控訴人車の運転手長南としては、制限速度内で南北道路のセンターライン寄りを走行し、自車の直進道路が優先道路であつて、T字型交差点の二五メートル手前で右折車及び控訴人車の一時停止を確認したのであるから、当然控訴人車らが自車の通過を待つものと信頼したものであり、一時停止中の控訴人車が右前方の安全確認をせずに自車(被控訴人車)の直前を、突然急角度で右折を開始するという無謀な行動に出ることまでを予測すべき状況にはなかつたというべきであつて、それゆえ、長南が、控訴人の右の無謀な行動を予測できずに徐行しなかつたとしても、一般通常の自動車運転者として、無理からぬものがあつたといわざるをえず、したがつて、長南には本件事故の発生につき何らの過失もないというべきである。」と改める。

二  以上によれば、原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山本矩夫 笹村將文 山下郁夫)

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